第2回味覚セミナー「味の相互作用と感覚間相互作用」レポート

酒育の会セミナー 2018年4月21日開催

「味の相互作用と感覚間相互作用」レポート

※この記事は有料会員限定レポートです。

2018年4月21日に開催された定期セミナー、株式会社味香り戦略研究所 主席研究員の高橋貴洋氏による『味覚セミナー』の第2弾のレポートです。前回は味覚に関する基本的なお話でしたが、今回は味覚や感覚との相互作用を様々な官能体験を通じて理解を深める講座でした。

1、味覚間相互作用 ~五味における相互作用~

前回の復習として、再度「おいしさ」の構成要素について解説していただきました。広義の味覚として甘味・酸味・塩味・苦味・うま味・渋み・辛みがあり、これににおいなど臭覚が加わったものが風味。さらに触覚や視覚、聴覚が加わると食味。さらに食事環境や心身の状態、食文化、時期などが加わったものが「おいしさ」と定義されています。

まずは、味のさまざまな相互作用について説明がありました。

食品は複数の味わいから成り立っており、2つ以上の味を混合することで相互作用が起きます。互いに影響し合う現象です。ここでは4つの相互作用が挙げられました。

①対比現象

ふたつの刺激を与えた場合、片方の刺激が他方を強める現象

例)甘味+少量の塩味→甘味が強くなったように感じる

②変調現象

先に食べたものの影響で、後の味わいが変化する現象

例)味覚修飾物質

濃い食塩水を飲んだ後、水を飲むと甘く感じる

③相乗効果

2種類の同じ呈味物質を混合すると、単独の時よりもはるかに味わいが強くなる現象

例)グルタミン酸塩+少量のイノシン酸塩→うま味が強くなる

④抑制効果

他の呈味成分によって、味わいが著しく弱められる現象

例)苦味+甘味 → 苦味が弱くなる(コーヒーに砂糖)

まずはこの中から、うま味の相乗効果について解説があり、実際に官能体験をいたしました。それぞれ閾値以下の濃度のグルタミン酸ナトリウム水溶液とイノシン酸ナトリウム水溶液をテイスティングし、その後これらを混合して再度テイスティングいたしました。

単独の溶液は閾値以下なので味を感じませんが、混合したものははっきりとうま味を感じます。また、ここに食塩を少量添加することで、さらにうま味が強く感じられる「対比現象」も体験いたしました。

次は、糖の種類による苦味のマスキング効果の違いについての官能体験です。コーヒーに上白糖水溶液とグラニュー糖水溶液を加え、そのまろやかさの違いを体感いたしました。グラニュー糖はショ糖100%なのに対して、上白糖はショ糖が98%・残りは還元糖からなっており、こちらの方がまろやかに感じます。さらに食塩やうま味を添加することで甘味がどのように変化するのか、合わせてテイスティングいたしました。食塩を足すと甘味がしっかりと、うま味を足すと甘味がより複雑になりました。

うま味に対する塩味がもたらす相互作用については、食塩濃度0.6%のとき最大に感じられます。また0.8~0.9%が人間にとって最も好ましく感じる濃度で、生理食塩水がまさにこの濃度となっています。

そして、うま味と酸味の相互作用についてですが、酸味は過剰なうま味を抑制し、一時的にキレを与え、すっきりさせて、うま味の後味を際立たせる効果があります。うま味はpH7のとき最大に感じられ、pHが下がると減少します。から揚げにレモンをかけると、一瞬爽やかになり、その後うま味がぶり返してきます。これについても、官能体験を行いました。

3%クエン酸水溶液を用意し、これをグルタミン酸ナトリウム水溶液やショ糖水溶液に加えて、テイスティングを行いました。うま味は遅れて感じられ、甘味はよりしっかりとのるような印象でした。

2、味覚と嗅覚

次に、嗅覚について解説がありました。

においを感じるとは、空間に舞い上がっている「におい物質」が呼吸によって取り込まれ、嗅細胞を刺激して感じる感覚のことです。その「におい物質」の構造により「においの質」「においの強さ」が異なり、多種多様なにおいを形成します。そしてにおいの濃度によってもにおいの質は変わります。

においが似ている食品同士は相性が良いことが多いといわれています。

また、においは2タイプあります。ひとつは鼻から感じるオルソネイザルアロマ・立ち香・鼻先香で、もう一つは飲み込んだ後に胃から戻ってくるレトロネイザルアロマ・口中香・戻り香です。これらは異なりますので、注意が必要です。

味とにおいについては、清涼飲料ベースを用意していただき、ここに柑橘香料やフルーツミックス香料を加えて官能体験をいたしました。さらに渋み溶液を加えることで、より

市販の飲料に近くなることを体感いたしました。

3、味覚と触覚(温度・食感)

食感と味の関係について解説がありました。

硬さの異なるプリンを用意し、そのくちどけ感の良さと味わいの強さの関係を実験した時、くちどけがよいほど味を感じるのが早い、つまり味が濃いと感じるという結果になるということです。

食感は、噛む力や唾液量、一口量などが異なるため個人差が大きいといえます。商品開発では、均一のおいしさや不均一のおいしさを踏まえ、また食材の硬さをあわせるなど、様々な工夫がなされています。

温度と甘さの関係については、ショ糖やブドウ糖はあまり変化がないのですが、果糖は温度が上がるとその甘味を感じにくくなる傾向があります。スイカなどの果物は冷やした方が甘く感じますし、コーラなどの清涼飲料は冷やして提供されますので、果糖を多く配合しています。

温度と酸味・うま味の関係についても官能体験をいたしました。様々な酸水溶液や、室温・冷却と温度の異なるうま味物質水溶液の比較テイスティングです。乳酸は冷やすとより酸味がシャープになり、貝のうま味成分であるコハク酸は冷やすとえぐみが出て、温めるとうま味がはっきりしてきます。

4、味覚と視覚

人は視覚から得られる情報が8割以上とも言われ、さらにその8割が色による情報であるといわれています。色彩によって、心理的に味わいにも変化が生じます。特に食欲を増進する色や減退させる色もあります。日本では青や紫は減退させる色とされていますが、欧米では青は増進させる色に分類されています。国や生活習慣によって異なるということです。

ここではカップの色によるコーヒーの味わいの感じ方の違いについて体験いたしました。同じ大きさの透明・白・黒のカップに同じコーヒーを入れて飲みます。すると色の濃いカップ(黒)の味わいが濃く苦く感じられます。またボトルの大小についても、同じ重さの場合小さいほうが重く感じられます。

ですので、テイスティングを行う際は同じグラスで行うべきということになります。

5、味覚と聴覚

音には外界音と咀嚼音の2種類があります。外界音はBGMや会話など、咀嚼音は歯から歯神経を通じ骨伝導で伝わります。食事の際の外界音によっておいしさも変わってきます。

6、味覚と心理効果・その他

様々な心理的効果によって味わいの感じ方も変わってしまいます。

 

今回のセミナーは全3回のうちの2回目です。次回6月23日も味覚の基本的なお話について、官能体験を交えて講義していただきます。なかなか聞くことのできない貴重なセミナーですので、奮ってご参加ください。